農業委員会の性格と業務
農業委員会の性格と業務について
農業委員会は、地方自治法及び農業委員会法によって市町村に設置が義務付けられ、公職選挙法を準用した選挙によって選ばれた農業委員を中心に構成される合議体の行政機関です。
農業委員会が行う業務は農業委員会法第6条に規定されており、主に3つに区分されます。
1.法令に基づく必須の業務(農業委員会法第6条第1項に規定)
農業委員会のみがその権限に基づいて行う業務で、農地の権利移動についての許認可や農地転用の業務を中心とした農地行政の執行をはじめ、農地に関する資金や税制などにかかわる業務も含まれ、地域における土地利用の在り方を踏まえた優良農地の確保と有効利用にとって特に重要となっています。
★ 農地法
○農地の権利の設定・移転に関する許可(第3条)
○農地の権利取得を認める別段面積の設定(第3条)
○地域における農業の取り組みを阻害するような農地の権利取得の排除(第3条)
○農業生産法人以外の法人等の権利設定の許可に際する市長村長への通知、農地利用状況の報告の受理、周辺の農地利用に支障を生じさせている場合の勧告、許可の取消し(第3条、第3条の2)
○相続等による農地の権利取得者の届出の受理及びあっせん等の措置(第3条の3)
○農地の転用(知事許可)に係る申請書の受理、送付及び意見書の添付(第4、5条)
○農業生産法人の指導等(第6~9条)
○農地の利用に係る紛争の和解の仲介等(第25条)
○農地の利用状況調査及び低利用農地の所有者等に対する指導等(第30~第35条)
○農地に関する情報等の提供(第52条)
★ 農業経営基盤強化促進法
○「基本構想」作成に関しての意見(施行規則第2条)
○農地売買等事業に関する事項が定められた農用地利用集積円滑化事業規定の決定(第11条の9、第11条の11)
○認定農業者への農用地の利用権設定等の促進(第13条、第13条の2)
○農用地利用集積計画の決定(第18条)
○農用地利用集積計画の取り消しの決定(第20条の2)
○嘱託登記(第21条 不動産登記法の特例)
○農用地利用規定の認定を受けた団体への助言(第23条)
★ 土地改良法
○土地改良事業に参加する資格者の認定(第3条)
○換地計画への同意・意見具申(第52条、第52条の2)
○交換分合(第97~第99条)
〈農業振興地域整備法13条の5、市民農園整備促進法第6条、集落地域整備法第12条、農住組合法の交換分合も準用〉
★ 農業振興地域整備法
○農業振興地域整備計画の策定・変更に対する意見(施行規則第3条の2)
★ 特定農地貸付法
○特定農地貸付の承認(第3条)
★ 市民農園整備促進法
○市民農園区域の指定及び開設の認定(第4条、第7条)
★ 特定農山村法(法第8条)
○所有権移転等促進計画の決定(第8条)〈農産漁村活性化法第7条も同様〉
★ 租税特別措置法
○証明書の交付(第34条の3、第65条の5、第70条の4・6)
★ 青年等の就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法
○認定就農者の農用地の利用関係調整の配慮(第22条)
★ 農業者年金基金法
○農業者年金制度の普及、加入の推進)
2.農業振興に係る業務(農業委員会法第6条第2項に規定)
農業委員会の専属的な業務(法令業務)ではありませんが、農業者の公的代表機関として農地の利用調整を中心に地域農業の振興を図っていくための業務です。
育成すべき農業経営の目標を定めた市町村の「基本構想」の実現に向けた認定農業者の育成や農地の利用集積、農業経営の法人化等を進める取り組みが強く期待されています。
また、農業および農業者に関する調査研究や情報提供に関する業務についても、農業の発展と農業者の地位向上を図ると共に各種業務を円滑に行う基盤として位置づけられています。
★ 農地の利用や権利関係の調整・あっせん
★ 農業、農村に関する振興計画の樹立及び実施推進
★ 農業技術の改良、農業生産の増進、農業経営の合理化及び農業者の生活改善を図る取組の推進とそれらに関する調査・研究
★ 農業および農業者に関する情報の提供及び発信、啓発宣伝
3.意見の公表、建議及び諮問に対する答申(農業委員会法第6条第3項に規定)
農業委員会の行政機関としての性格ではなく、農業者の公的代表機関としての性格を前面に押し出したもので、地域内の農業および農業者に関するすべての事項について、意見を公表したり、行政庁に建議し、或いは行政庁からの諮問に応じて答申する業務です。
地域の農業や農業者の立場に立って、進むべき方向とこれを実現するための政策の在り方を明らかにしていくことは農業者の代表として選ばれた農業委員で構成される農業委員会の大事な役割で、委員一人一人が、地域の農業者の声を汲み上げ、農業の発展に結び付けていく取り組みを行うことが重要です。